琵琶湖の観測塔見学(2016/10/28)

日本で最も大きい湖である琵琶湖。琵琶湖は恵みの湖として、豊かな水と環境を流域に 暮らす人々に提供しています。また琵琶湖には風や熱による流れ、内部重力波などの波、 風が強いときには波浪など、海と同様な流体現象が生起しているという観点でも、とて も興味深い湖です。

その琵琶湖では、琵琶湖の治水対策・利水対策・環境保全を目的としてかつて琵琶湖開 発事業が行われ、現在は独立行政法人水資源機構 の琵琶湖開発総合管理所(以 下琵琶湖管理所と略記)がその事業の維持管理を担っています。琵琶湖管理所は管理対 策としていくつかの観測所を琵琶湖に有しています。その一つ、安曇川沖自動観測所に、 琵琶湖管理所機械課の岩松さんのご尽力により、海洋関連の課題演習を受講している3 回生4人、海洋物理研究室の4回生3人、修士2回生の1人とスタッフ2人の計9人が 見学させて頂くことになりました。


安曇川沖自動観測所の場所(北湖中央にある星印)
雄琴沖自動観測所(南湖 にある星印)には時間が無くて見学できませんでした
図はグーグルマップ

安曇川沖自動観測所は北湖の中央に位置します(上図の星印)。観測所というより観測 塔と言った方が我々にはしっくりくるので、本稿では観測塔と記します。北湖の中央に あるので、当然ながら船に乗って移動する必要があります。我々は大津市堅田にある管 理所すぐそばの港から水資源機構の船「翔泳」(19トン)に乗り移動しました。出港か らおよそ1時間ほどかかりますが、「翔泳」には快適なキャビンがあり、そこで同行し て頂いた管理所環境課の松永課長と波多野さんによる解説や、参加者同士で話し込んで いるうちに、あっという間に到着しました。


キャビンでの様子

観測所に到着(向こうに見える白い建物が観測塔)

観測塔は湖面に浮かんでいます!ただし水深約68mの湖底に係留されているため、ほとん ど動きません(強風時には揺れますが・・・)。観測塔は5階建て(中に階段がある)で、 通常のビルよりは天井が低いですが、例えるなら5階建てのビルが浮いているようなもの です。

観測所では気象(風向・風速、湿度)や水位、波高、そして水質(水温、塩分、溶存酸 素、・・・)などを計測しています。観測塔に人は常駐していないので(常駐できるほ ど大きくはない)計測はもちろん全て自動です。水質は湖面近くだけでなく、自動で昇 降する水質計(CTD)を使って湖水深くも計測しています。個人的には、気象と水質の鉛 直分布の同時観測が、かなり貴重なデータだと思います。これらのデータの取得方法 (計測の実際)と、それがどのように琵琶湖の治水・利水・環境保護に役立てられてい るかを、松永課長と波多野さんに説明して頂きました。


観測塔屋上で波多野さん(中央)に測器に関して説明して頂きました
観測塔最下階(水中)で松永課長(中央)にデータ処理について説明して頂 きました

帰りの船内では魚探に写る魚種やその特性についても船長から教えて頂きました。実は 自動観測所は南湖にもあります(最初の図の星印)。今回は時間がなくて寄れませんで したが・・・。


船長(右端)にも琵琶湖の特性についていろいろと教えて頂きました

堅田に戻った後は、車で移動して大同川排水機場を見学しました。集中豪雨などにより 琵琶湖の水位が上昇すると、河川に水が逆流し低地に浸水し被害が発生する場合があり ます。排水機場は、そのような危険性があるときに、河川出口にある水門を閉じ、河川 の水を強制的にポンプで琵琶湖に放出するのです。大同川の排水機場は琵琶湖で最大と いうことで、排水ポンプを動かすエンジンも、排水管も、何もかも大きかったです。琵 琶湖管理所機械課の岩松さんから、排水機場の役割と仕組みを説明して頂きました。あ まり起こらない災害時に被害が発生しないようにするには、平時に備えることが必要で す。このように書くと当たり前のようになりますが、その平時の備えが以下に大変か (重要か)、勉強になりました。


排水機場では岩松さん(左端)から治水対策について多くのことを学びました

なお、水資源機構では治水・利水対策の効率化や環境保護の適正化のため、様々な研究・ 開発も行っているとのことです。今回は、ヘルメットにつけたカメラの映像をネットワー クで共有し、同じくヘルメットにつけたスクリーンに映し出すことで、遠隔地で作業し ている人同士の連携を行う装置を新たに開発したとのこと。実際に装着させて頂きまし た。水資源機構には総合技術セ ンターという研究所的な部署もあり、水資源対策を進化させているとのことです。


新開発のウェアラブルカメラ・スクリーンを装着しているところ

排水機場を最後に戻りました。朝8時集合で17時解散だったのでみんな疲れて帰りの車中 は静かでした。(運転手は寝るわけにいかないのですが・・・。)いろいろと有意義な 1日でした。水資源機構琵琶湖開発総合管理所の松永課長、波多野さん、そして岩松さ ん、本当にありがとうございました。(文責:吉川)


参加者一同