勢水丸実習航海(2024/11/5-8)
2024年11月5日~8日、三重大学生物資源学部の勢水丸で行われた海洋観測実習の日記です。
0日目 11/5
海洋物理学研究室では、三重大学の練習船「勢水丸」による海洋観測実習を毎年行っています。 2024年度の実習は海洋物理学研究室から4名、防災研から2名、そして三重大から3名の計8名の学生が参加しました。
朝9時に京大に集合し、先生の運転する車で松坂へ向かいます。今回は防災研のメンバーも参加し、三台の車が京都を発って土山のSAで合流しました。SAでは 五平餅のいいにおいが漂っていましたが誰も購入せず。少し話したのちに出発しました。 勢水丸は松坂港に停泊していますが、まずゾンデに関する荷物と学生のピックアップのため三重大学へ寄り、そのままお昼ご飯へ。お店のチョイスはM1に委ねられます。 K先生は「ナイスでグッドで、居心地が良くて、大人数が座れて、リーズナブルで、なおかつおなかがいっぱいになるような所を頼むよ」とのことでした。なんとか選んだ店は 小鉢を自分で取って定食を作るタイプの店でしたが、K先生いわく、「グッド」とのことでした。ナイスだったのかは分からないままです。 向かいの店の方が良かったのでは?という声も聞かれましたが、知りません。ともかくお腹いっぱいになったところで港へ向かいます。
港に到着すると持ってきた荷物の積み込みです。機材を整理しつつ、工具を使った装備の設置・取り外しの方法や、 観測機器の説明を受けます。今回はベクター(流速計)と、ターボマップ(微細構造乱流プロファイラー)、ゾンデを持ち込み、加えてCTDによる観測を行いました。 ひととおり準備が済むと、一等航海士(チョッサー)による安全講習をうけ、船内を案内してもらいます。 ブリッジの各種機器からコンパスデッキのコンパス、レーダーなど、興味深いものがたくさんあります。個人的には航海日誌が面白かったです。流麗な英語の筆記体で書かれていましたが、 通常の文法(語法)とは異なっているそうです。船に関する言葉には聞き慣れないものもあり、船の前方は「オモテ」、後方は「トモ」と呼ばれます。最初トモに集合、と言われたときは 一瞬混乱しました。ま「とも」な風(追い風)を受ける方だから後ろがトモ、という覚え方を先生に教わります。
船内見学を終えると短い休憩を挟んで買い出しと夕食へ。買い出しでは航海中に必要な飲食物を購入します。これくらいでいいか……と思ったところに他の人がもっと
買いこんでいるのをみて、焦りました。経験の差でしょうか。
夕食は中華料理屋にいきました。店の名前が中国語だったのですが、読み方の分からないことを言うと、K先生に驚かれます。「君それ読めないの?」(以下、その名前にちなんで、
さだまさしの「長江」に関するエピソードが語られるが、割愛)料理の方はボリュームたっぷり、本格的な味で、満足して船に戻ります。
船に戻るとローテーションで風呂に入る他は自由時間で、先ほど買った飲み物とお菓子をつまみながら団らんの時間です。デッキで釣りを楽しむ人もいました。小ぶりなアジが釣れ、
刺身にして食べたそうです。
そうこうしているうちに時間は経ち、次の日に備えて23:00には就寝しました。
勢水丸
観測に用いるターボマップの説明を受ける
レーダー
1日目 11/6
6:15に学生起床の放送で目が覚めます。食堂に集合してゾンデのボンベ積み込み作業の説明を受け、朝ごはんを食べます。ご飯の後は実際にボンベの積み込みを行いました。 陸からボンベの機材を受け取り、所定の場所に置きます。甲板次長からボンベをセットする向きを教わりました。(この甲板次長の読み方ですが、研究室に入った人はあるところで目にすることになります) 作業を終えると自由時間です。デッキに出て空や海をみて過ごしますが、波が昨日より少しだけ立っている印象を受けます。その後10:00に出港しました。
出港して岸を離れると、コンパスデッキに出て、干物にされる魚を横目に海を眺めました。波の様子をじっと見ていると、ランダム位相振幅モデルのことが分かってくるようなこないような…… ひとつの波に注目していると、青い水が小さな波の作る模様をのせながら持ち上がり、気付くとひとつの波を追いかけることは難しくなっていて、別の波が違う方向からやってきます。ぼんやりと全体を 眺めていると、ところどころで砕ける波がしぶきをあげて、それが一面の青い視界の中にコントラストを作ります。いつまでも眺めていたいところですが、酔い止めの副作用か眠くなり、すこし寝ました。
午後になるといよいよ観測ですが、今回は風が強く、外洋までいくことが出来ませんでした。湾の入り口にまでは行き、予定より遅めの13:30から観測の練習を行うことになりました。
先にお昼ご飯です。ビーフカレーをいただきました。具が大きく、肉のうまみがあって、非常に美味しいカレーでした。たくさん作っていただき、おかわりまで貰いました。食後に皿を洗うと
観測(の練習)の開始です。四つの班に分かれ、ブリッジでのCTDに関する指示、デッキでのCTDの作業、バケツ採水と透明度の測定を交代で行います。僕の班はブリッジの作業から開始しました。
トランシーバーで連絡をとりあいながらの作業は緊張しましたが、船員さんと先生の丁寧なサポートもあり無事進めることができました。
ローテーションでの作業に入った頃から風と波が強くなりはじめ、揺れもかなり感じるようになってきました。作業が一巡すると、流速計と乱流プロファイラーです。
流速計はブイにつけ流し、乱流プロファイラーはセンサーを上向きにして投下し、浮力で上がって来るのを待ちます。高くなってきた波の水を被りつつ、乱流計が水面から顔を出すのを待ちますが、
なかなか上がってきません……。重しに繋がったロープが絡まっていたのが原因のようでしたが、あまり良いデータが取れませんでした。(後で確認すると、鉛直流速がスムーズな分布になっておらず、
自由浮上していなかったのが原因のようです。)外洋に出て再挑戦、と行きたいところでしたが、風速が15m/sを超えてしまい、航行の継続はできないとのことで、湾内に戻りました。16:00に一日の作業を終え、
めいめいくつろぎます。取ったばかりのデータを確認しようと食堂にある大きなモニターをつけると、アメリカ大統領選の速報が入ってきます。トランプ大統領の再選を海の上で知ることとなりました。
その後の夕食はとんかつでした。昼のカレーと同じく、非常においしい晩御飯でした。食べ終えるとみんな集まっての団らんタイムで、みんなが買ったおつまみやお菓子を交換し合い、
話に花が咲きます。先生たちの昔話から観測の話まで、興味深いエピソードが尽きずに語られます。話の内容と濃さ・長さに比例した紙面を割きたいところですが、プライベートな
話も多くなるので割愛します。
出港前の風景

表面波(やや荒れ)
一日目の昼食はビーフカレー
ブリッジでのCTDオペレーションの様子
CTDフレーム
ベクター(流速計)による観測
一日目の夕食はトンカツ
2日目 11/7
この日も6:15に起床しました。船内での生活に少し慣れてきたのもあり、よく眠れました。 食堂での朝礼では、強風と波浪のため当初の計画を変更し、湾内の観測点を巡ってCTDメインで観測を行うことが伝えられました。外洋に出て黒潮に接近することができず残念でしたが、「伊勢湾を知りつくそう」プロジェクトも非常に楽しそうだと思いました。 ラジオ体操のあと、船内清掃を行いました。この日は浴室の清掃を担当したのですが、節水のため、洗剤で全箇所を洗ってから最後にまとめて流すよう船員さんから教わりました。 朝食を済ませ、観測点に着くまで待機します。
最初の観測点に到着してデッキに出ると、とにかく寒い!もっと風を通しにくい上着を持ってくるべきでした。前日の練習通り、班に分かれてローテーションで作業を行い、終わり次第次の場所に移動します。練習の成果もあり、一つの観測点につきすべての作業は合計7分ほどで終わるようになりました。 一連の作業が終わるたび、食堂にある観測点マップに海面付近の塩分の計測値を書き込んでいくのですが、次の観測点は値が高いか低いかを当てる「塩分HIGH & LOWゲーム」が行われていました。「ここは河川流入があるから…」、「ここの水がエクマンで運ばれるから…」などと議論を交わして盛り上がっていました。 4つの観測点で作業を終えたのち、待ちに待った昼食です。 なんと中華丼! とてもおいしかったので、船酔いも恐れずおかわりしてしまいました。
午後、湾口へと近づいくにつれ、海はますます荒れてきます。 船体の揺れもますます大きくなり、うまく重心移動をしないとその場に立っていられないほどになりました。 室内にいると酔ってしまいそうなので甲板に出て風を浴びるようにしていましたが、 室外は室外で大変です。 トモで作業をしていると、大波がやってきて全身水を被ってしまうこともありました。 特に驚いたのが、高いほうの甲板に上っていてもずぶ濡れになるほどの波しぶきを被ってしまったことです。 日常では感じることのないスリル満点の時間で楽しかったです。 そんな中、誰よりも楽しそうなのがY先生でした。 「観測はこうでなくっちゃ。乱流観測なんて本当はもっと荒れた海でやってデータをとりたいんだよ。」 とおっしゃる先生は非常に頼もしかったです。
結局、湾内のもっとも外側の観測点を回ることは困難だったため、湾奥の観測点まで引き返すこととなりました。 そこで最後の観測作業を行い、日没ギリギリでしたが、流速計による観測も行うことができました (残念ながら、機器の不具合によりデータがうまく取れませんでした)。 結局、今回準備していたラジオゾンデによる気象観測はできずに終わってしまいました。 観測データを得ることの難しさ、貴重さを身をもって知ることができた一日でした。
すべての作業を終えたあとの夕食は豚キムチ。疲れた体が一気に元気になりました。 夜の宴会ではお酒が解禁され、観測の話、人生の話などいろいろなことが語られました。
二日目の昼食は中華丼

濡れた甲板と表面波(大荒れ)
日没ギリギリの乱流計観測
二日目の夕食は豚キムチ
3日目 11/8
最終日も6:15に起床して朝礼に向かいます。 下船準備についての指示を聞き、感謝の気持ちを込めて最後の清掃を行います。 朝食にはサンマが登場。あの時の干物、だったかどうかはわかりませんが、おいしかったです。 観測機器や各自の部屋の片付けを済ませると、いよいよ着港。 聞いたところによると陸地に向けてロケットランチャーのようなものでロープを飛ばしていたそうなのですが、僕は別の場所にいたため見ることができませんでした。
9:00からは閉講式を行いました。 今回は一人もダウンすることなく実習を終えられたことが良かったという講評をいただきました。 湾外には出られなかったとはいえ、なかなかタフなメンバーが揃った実習だったと思います。 いよいよ、荷物の積み下ろしをして下船します。久しぶりに陸地に足を踏み入れた時は、安堵感と達成感がありました。 航海士の方々と記念写真を撮り、解散しました。
帰りには三重大の学生を送り届ける前に伊勢のおかげ横丁に立ち寄り、各々散策を楽しみました。 三重大の学生とお別れした後は、M1担当お昼ご飯探しです。最初に見つけたお店は行ってみたものの定休日でがっかりしましたが、近くにいい感じの蕎麦屋さんを見つけました。K先生からは「ナイスでグッド」の評価をいただくことができました。 その後、無事に大学まで帰り、解散しました。
三日目の朝食はサンマ
下船後記念撮影